2017年4月10日月曜日

国試で学ぶ カルテの書き方、プレゼンのお作法

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国試の臨床問題からカルテやプレゼンのお作法を学びましょう

研修までに覚えたい常識


  • カルテをSOAPで記載
  • 病歴のAMPLE
  • Review of system
  • 痛みのOPQRST
  • pertinent negativeの意味
  • プレゼンのお作法


国家試験臨床問題の文章はカルテやプレゼンのお作法通りに書かれています。

せっかく何百題も解くのであれば、カルテの書き方やプレゼンの仕方を意識しながら勉強してみてはとうでしょうか。

この記事は、国試の臨床問題の文章をカルテの書き方・プレゼンの仕方の面から分析します。

カルテを書く意味

そもそもカルテを書く意味は、情報を整理し、考察し、記録し、伝達する事だと思います。そのためにはある程度の共通の枠組みがあったほうがいいですよね。その共通の枠組みがSOAPです。
カルテはSOAPで記述しましょう

SOAP


  • Subjective data(主観的情報)
  • Objective data(客観的情報)
  • Asscessment(評価)
  • Plan(計画)


患者からの情報(S・O)、記載者の判断(A)、具体的な介入方法(P)に分けて、順番に記載するSOAPは論理的な思考を深めやすいですし、読み手にもわかりやすく伝わります。

初診時カルテの項目

SOAPに沿って初診時カルテを記述してみましょう。初診時カルテの項目例を以下に挙げておきました。
初診時カルテの例

S: subjective data

患者・家族の証言から得られた情報です。

  • 年齢
  • 性別
  • 主訴
  • 現病歴
  • 既往歴
  • アレルギー歴
  • 薬剤歴
  • 生活歴


国試の臨床問題も必ず、年齢、性別、主訴から始まりますね。現病歴は患者を主語にして、時系列に沿って、過去形で記述しましょう。

痛みのOPQRST

痛みが主訴の場合は、痛みのOPQRSTを覚えておくと、聞き漏らしがありません。


  • Onset:発症様式(突発、急性、亜急性、慢性)
  • Palliative/ Provocative factors:寛解増悪因子
  • Quality/ Quantity:質と程度
  • Resion/ Radiation:主要部位と放散部位
  • Symptoms associated:随伴症状
  • Time course:時間的経過


上記の国試問題のOPQRSTは以下のようになりますね。

  • Onset:急性
  • Palliative/ Provocative factors:前かがみで和らぐ
  • Quality/ Quantity:歩くと響くような
  • Resion/ Radiation:右下腹部
  • Symptoms associated:心窩部不快感、悪心、嘔吐
  • Time course:昨日心窩部不快感・悪心⇒今朝右下腹部痛⇒嘔吐⇒歩行時響く

Review of system: ROS

ROSで全身の症状を網羅しよう。

「現病歴」が聴取できたら、次はReview of system: ROSをチェックしましょう。頭から足先まで全身の症状をチェックするリストです。

ROSをチェックすることで現病歴を補足するような陽性所見や陰性所見が明らかになります。また、思いがけない合併症を発見する契機となり得ます。

病歴聴取のAMPLE

「現病歴」以外は、忙しい救急現場では聞き忘れてしまうこともあるかもしれませんので、病歴聴取のAMPLEを暗記しておくと便利です。

  • Allergy:アレルギー
  • Medication:内服薬
  • Past history & Pregnancy:既往歴と妊娠可能性
  • Last meal:最後の食事
  • Events & environment:受傷機転と現場状況

O: objective data

Oは診察時のバイタルサイン、身体所見と検査所見を記載します。

バイタルサイン

バイタルサインは、重症度や緊急度を察知する一番の指標です。

意識⇒循環(血圧、脈拍数)⇒呼吸(呼吸数、SpO2)⇒体温の順に記載すると良いです。

身体所見

身体所見は頭部⇒頸部⇒胸部⇒腹部⇒四肢のように頭から足先まで記載します。

腹部診察は体性痛の所見がないかが重要です。上の問題では、「反跳痛」を認めており、腹膜まで炎症の及んだ、体性痛が示唆されます。

検査所見

検査所見は尿、血液、画像検査などですが、国試問題を解いていると陽性所見にばかり捉われがちで、陰性所見まで目が向かないことはないでしょうか。

しかし、陰性所見も診断や治療方針に関わる情報を与えてくれることがあります。これをpertinent negativeと言います。

上記の問題文には、さらっと書かれた「妊娠反応の陰性」がpertinent negativeです。

「若い女性の腹痛は妊娠を疑う」のが鉄則で、この陰性所見によって子宮外妊娠は除外され、鑑別診断を進めることができます。

A: asscessment

AではS・Oをもとにプロブレムを抽出して考察を加えます。医師としての一番の腕のみせどころです。S・Oはただ書き取ればいいてすが、Aは自分の頭で考えなければなりません。主語は自分にして、現在形で記載しましょう。

プロブレムリスト

介入の必要がある事象は全てプロブレムとしてリストアップしましょう。プロブレムが複数ある場合は、重要度順に番号を振ると良いです。

プロブレムをリストアップしたら、各プロブレムについて鑑別診断を考えます。その際は診断の可能性を根拠に基づいて重み付けしていきます。

上の問題でのAは以下の感じでしょうか。

#1. 腹痛
要約:妊娠反応陰性の若い女性に起きた急性発症の右下腹部痛
S/O:虫垂炎(∵嘔気の先行する心窩部から右下腹部に移動する痛み、圧痛)
R/O:子宮外妊娠(∵妊娠反応陰性)
特記:「歩いて響く」「反跳痛」から体性痛が示唆され、腹膜炎に至っている

※S/Oはsuspect ofで「可能性が高い」、R/Oはruled outで「可能性は低いが危険があるため除外したい」の意

P:Plan

PではAから導かれる計画を記載します。治療プランや診断プランなどが含まれます。

上記の問題では「外科コンサルト」が治療プランとなるでしょうか。

プレゼンのお作法

カルテは情報を整理するために網羅的に記載しますが、プレゼンは診断に関係する情報のみを伝えます。国試の臨床問題の文章は最低限の情報しか記載されていないという点でカルテというよりもプレゼンに近いですね。

例えば、上の問題の身体所見では腹部所見に詳しい一方で、胸部所見が何も書かれていませんね。

何が省略されているかを考えながら国試の文章題を解くと、病棟実習でも上手なプレゼンが出来ると思います。

Opening Statement

ちなみに、プレゼンの冒頭に「既往+年齢+性別+主訴」を盛り込んだ一言を述べると以降のプレゼン内容がわかりやすく伝わります。この冒頭の一言をopening statementと呼びます。

上の問題だと以下のようなopening statementになるでしょうか。

「特に既往のない、妊娠反応陰性の若い女性が急性の右下腹部痛で受診しました」

簡単ではありましたが、これでカルテの書き方・プレゼンのお作法の記事を終わりにします。もっと詳しくという方は是非、下の本を参考にしてください。

参考文献

「型」が身につくカルテの書き方


カルテの書き方は意外に誰も教えてくれませんし、先輩のカルテの書き方が正しいとも限りません。この本を読めばカッコいいカルテが書けるようになりますよ。

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2017年4月1日土曜日

【動画あり】灼熱!末梢静脈路確保塾

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末梢静脈路確保の問題です。

研修までに覚えたい常識

  • 末梢静脈路確保の手順
  • 末梢静脈路確保のコツ
  • 末梢静脈路確保の練習法


末梢静脈路確保は治療のはじまり

末梢静脈路(ルート)が確保できれば、輸液も抗菌薬も点滴することもできます。つまり、末梢静脈路確保は治療のはじまりと言えるのではないでしょうか。

日常診療で多用する手技ですので、学生の時から機会を捉えて挑戦しておきましょう。

同期の協力のおかげで末梢静脈路確保の動画を作成できましたので、これを見てまずはイメージトレーニングをしてみてください。(ちなみに採血手技の動画もupしてありますので、そちらもご参考ください)


ここから下では、末梢静脈路確保について、準備、手順、コツ、練習に分けてお話しします。特に練習法は熱く語っています。最後までお読みください。

準備

輸液セットを予め組み立てておきましょう(「輸液セットの組み立て方」の記事はコチラ)。輸液バッグにびん針を刺し、チューブ全体に液体を満たしておきましょう。
末梢静脈路確保の器具 輸液セットは予め組み立てよう
  • 輸液セット
  • 手袋
  • 駆血帯
  • アルコール綿
  • 留置針(20~24G)
  • 固定用フィルム
  • テープ
  • 廃棄用ボトル

留置針は内筒と外筒に分かれる


留置針は金属針である内筒と、非金属カテーテルである外筒で構成されます。内筒は刺す用、外筒は留置用であり、内筒は外筒よりも長くなっています。

針の太さは22Gを基本として、血管が細そうな人は24Gを用いましょう。

末梢静脈路確保の手順

1.環境を整えよう

  • 穿刺部位を心臓より低い位置に保とう

2.清潔操作を心掛けよう

  • 手指消毒をしよう
  • 手袋を装着しよう

3.穿刺部位を探そう

前腕中央部の橈側皮静脈や正中皮静脈などを狙いましょう
実線矢印:橈側皮静脈 点線矢印:正中皮静脈

  • 穿刺部位の中枢に駆血帯を巻き血管を怒張させよう
  • 見て「盛上がっている」、触って「弾力のある」血管を探そう
  • ※関節近くは避けよう

4.消毒しよう

  • アルコール綿で末梢から中枢に向かい消毒しよう

5.穿刺しよう

  • 血管固定のために穿刺部位より抹消の皮膚を軽く引張ろう
  • 血管は表面付近にあるので角度をつけず穿刺しよう
  • ※切り口(ベベル)は上に向けよう

6.内筒の逆血を確認しよう

まずは留置針の内筒に逆血を確認しよう
  • 持ち手部分まで血液が逆流するのを確かめよう

7.針を寝かせ数mm進めよう

  • 外筒の先端が血管内に入るまで進めよう 

8.外筒の逆血を確認しよう

9.外筒を根元まで進めよう

外筒の逆血を確認してから、外筒だけを根元まで進めます

 

10.駆血帯をはずそう

11.内筒を抜こう

  • 廃棄ボックスに針を捨てよう

12.点滴ラインを接続しよう

13.滴下を確認しよう

  • クレンメを全開にして滴下を確認しよう
  • 穿刺部周囲が張れないか確認しよう

14.固定しよう

透明フィルムと強めのテープで固定
  • フィルムとテープで固定しよう

 コツは血管怒張

コツは静脈をいかに怒張させるかです。末梢血流を増やし、静脈血をうっ滞させる方法を紹介します。

  • 拳を握ってもらう
  • 軽くたたく
  • 腕を下げてから駆血帯を巻く
  • 末梢から中枢へ消毒
  • 駆血帯を巻き直す
  • 蒸しタオルで温める
  • ※うまくいかないときは反対の腕で挑戦しよう
  • ※それでもだめなら、先輩を呼ぼう


灼熱!ルート確保練習

実際に患者さんを前にして成功するためには自信が大きく影響すると思います。その自信をつけるためにはやはり、練習あるのみではないでしょうか炎

手に馴染ませよう

バッドの握り方がわからなければ、バッドを振ることすらままならないですよね。

留置針の持ち方:親指と中指で挟み、人差し指を外筒に添える

僕は親指の腹と中指の側面で持ち手を挟み、外筒に人差し指を添えます。持ち手の柄は母指球に当たるようにして固定します。自分なりのしっくりくる持ち方を研究しましょう。

「素刺し」をしよう

バッドの振り方がわからなければ、ボールは打てませんよね。「素振り」ならぬ「素刺し」をして型を確認しましょう。僕は人差し指だけで外筒をスライドさせる動作を何度も繰り返し練習しました。

手順を繰り返そう

身近な物を使って、実際の手順を繰り返してみましょう。僕はぬいぐるみを人体に見立て、紐を血管として代用し、ティッシュを皮膚として被せて練習していました(笑)
紐や駆血帯を血管に見立てて練習
ティッシュを皮膚に見立てて練習

本当は血管はゴム製の駆血帯で代用するのがベストです。切れて使い物にならなくなった駆血帯をもらってきましょう。紐の場合は紙袋についているものが刺しやすいと思います。

ファーストステップは紐に刺す練習からはじめて、ネクストステップは紐にティッシュを被せて、そのうえから刺す練習をしましょう。

自分の腕を触って探す

人が違っても血管の走行はある程度似ています。自分の血管の走行を確認したり、刺しやすそうな血管の弾力を触って確かめておきましょう。

以上、「灼熱!末梢静脈路確保塾」でした。「熱血!末梢静脈採血塾」(コチラ)と合わせて、みなさんの少しでもお役に立てれば幸いです。

次回は、救急現場で多用する「ルート採血」の記事を書きたいと思いますので、そちらもご覧ください。

参考文献

診察と手技がみえる vol.2

p54-67

「○○がみえる」シリーズで唯一読んだ本。写真が多くて視覚的にイメージしやすくなっています。手技の本は一冊あるととっさに調べられて便利です。

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