2017年3月27日月曜日

ひとこと!抗菌薬スペクトラム

抗菌薬ことはじめ(コチラ)の補足として、各抗菌薬について、そのスペクトラムを簡単に記します。研修医になりましたら、感染症プラチナマニュアル等で詳しく勉強してください。

天然ペニシリン:ペニシリンG


  • 連鎖球菌、腸球菌
  • 髄膜炎菌の第一選択
  • 横隔膜より上の嫌気性菌
  • 梅毒

アミノペニシリン:アンピシリン、アモキシシリン


※アンピシリン経口薬は消化管吸収が悪いので、経口薬はアモキシシリンで
  • 天然ペニシリンのスペクトラムに加え
  • 腸球菌の第一選択
  • リステリア


アミノペニシリン/βラクタマーゼ合剤:アンピシリン/スルバクタム、アモキシシリン/クラブラン酸


  • アミノペニシリンのスペクトラムに加え
  • 黄色ブドウ球菌
  • 大腸菌などの腸内細菌科
  • 横隔膜より下の嫌気性菌

抗緑膿菌ペニシリン:ピペラシリン


  • 緑膿菌やSPACE

セフェム系の概要


  • ペニシリンと違い黄色ブドウ球菌に活性あり
  • グラム陰性桿菌に広く活性あり
  • 腸球菌、リステリアには第4世代まで全て無効
  • 第3、4世代は中枢神経系の移行性あり

第1世代セフェム:セファゾリン、セファレキシン


  • 黄色ブドウ球菌の第一選択、連鎖球菌
  • PEK

第2世代セフェム:セファチアム

第1世代と第3世代の間で中途半端なスペクトラムとなり、ほとんど使用しません。

抗嫌気性第2世代セフェム:セフメタゾール

  • 特に、横隔膜下の嫌気性菌
※所謂、セファマイシン系です。

第3世代セフェム:セフトリアキソン

※再使用頻度の抗菌薬です。

  • 第1世代セフェムのスペクトラムに加え
  • SPACE以外の多くのグラム陰性桿菌

抗緑膿菌第3世代セフェム:セフタジディム


  • SPACE

※グラム陽性球菌はカバーしません

第4世代セフェム:セフェピム

セフトリアキソン+セフタジディムと理解しておきましょう。

モノバクタム系:アズトレオナム


  • セフタジディムと同様

※ペニシリン系、セフェム系に過敏反応の患者にも使用できます。

カルバペネム系:メロペネム

※原則「全部効く」ので効かない菌を覚えましょう。乱用は多剤耐性緑膿菌発生のリスクとなります。

「効かない菌」

  • MRSA(βラクタム阻害薬が無効な黄色ブドウ球菌)
  • VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
  • Mycoplasma、Chlamydia、Legionella


グリコペプチド系:バンコマイシン

※抗MRSA薬です。

  • グラム陽性菌なら何でも

抗VRE薬:リネゾリド


  • MRSA、VRE

アミノグリコシド系:ゲンタマイシン

単剤使用は少ないです。

ニューキノロン系:シプロフロキサシン、レボフロキサシン


  • Mycoplasma、Chlamydia、Legionella
  • 第二世代のシプロフロキサシンは主にグラム陰性桿菌
  • 第三世代のレボフロキサシンは、肺炎球菌もカバー。「レスピラトリーキノロン」たる所以です。

※緑膿菌をカバーできる唯一の経口薬です。
※抗結核作用があるので結核の診断を遅らせる危険があります。

マクロライド系:アジスロマイシン


  • Mycoplasma、Chlamydia、Legionella

テトラサイクリン系:ミノサイクリン、ドキシサイクリン


  • Rickettsia、Mycoplasma、Chlamydia

※8歳以下で歯の色素沈着のリスクです。

リンコマイシン系:クリンダマイシン


  • 黄色ブドウ球菌、連鎖球菌
  • 嫌気性菌

メトロニダゾール


  • Clostridium difficileを含む嫌気性菌

ST合剤:スルファメトキサゾール / トリフメトプリム


  • ブドウ球菌、連鎖球菌
  • Esherichia coli、Klebsiella
  • ニューモシスチス


参考文献

感染症プラチナマニュアル

p5-60

抗菌薬のスペクトラム、起因菌の分類、臓器別の感染症診療がポケットサイズにまとめられた一冊。これさえあれば抗菌薬選択には困りません。毎年更新されています。

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