2017年3月18日土曜日

輸液はNa濃度から考えよう

110B5


正答率50%の問題です。

研修までに覚えたい常識

  • 輸液はNa濃度から考える
  • 1日に最低限必要な成分
  • Na 1g=17mEq

 

輸液の前に体液生理

そもそも輸液とは、極端な話「水に併せてNaを細胞外液に入れる」ことだと思います。輸液を理解するためにはまず体液生理から考えていきましょう。

細胞外液と細胞内液

人間の体の60%は水で構成されており、その1/3は細胞外液、その2/3は細胞内液です。細胞外液と細胞内液は細胞膜によって仕切られています。

水分の1/3は細胞外液、2/3は細胞内液
 

張度tonisity

細胞外液にはNa(とそれに対応する陰イオン)とブドウ糖が限局し、細胞内液にはK(とそれに対応する陰イオン)が限局しており、両者の浸透圧によって水を引っ張り合って平衡状態を保っています。そして、水の引っ張り合いに関係する溶質たちの浸透圧を張度tonisityと言います。

Na・ブドウ糖とKが水を引っ張り合う

等張液負荷

例えば、細胞外液に生理食塩水(0.9%食塩水)を入れた時、どうなるでしょうか。生理食塩水の「生理」とは張度を細胞外液に等しくしたものです。すなわち、生理食塩水は細胞外液にとって「等張液」ですから、細胞外液と細胞内液の張度のバランスは崩れず、水の移動は起りません。


等張液を負荷しても水の移動は起らない

高張液負荷

では、細胞外液に3%食塩水を入れた時はどうなるでしょうか。3%食塩水は細胞外液にとって「高張液」ですから、細胞外液がその分、高張になります。


3%食塩水負荷で細胞外液が高張になる

すると、崩れた張度バランスを補正しようと、水が細胞内から細胞外に移動します。


高張な細胞外液に水が移動する

低張液負荷

では、真水を入れた時はどうなりますか。

真水を入れると細胞外液は低張となる

上記の反対ですね。細胞外液が低張になって、それを補正しようと、水が細胞内に移動します。

相対的に高張な細胞内液に水が移動する

このように、輸液中のNa濃度を変えることで行き渡らせる体液分画を調節することができます。

輸液製剤の種類

では、輸液製剤の種類を見てみましょう。生理食塩水(のNa)を真水でどれだけ薄めたかで4つに大別されます。
輸液は生食と真水の割合で4種に大別

特に臨床で大事なのは生理食塩水と維持液です。


生理食塩水

等張液である生理食塩水は細胞外液を補充したいときに用います。簡単に言えば、ショックやショックになりうる病態に使用します。だから救急現場で多用されます。

※生理食塩水のNa濃度(154mEq/L)が血清Na濃度(140mEq/L)より高いのは、血液中のNa以外の電解質をすべてNaClで置き換えて等張にしているためです。


 維持液

生理食塩水 : 真水=1 : 3でカクテルした輸液が維持液です(別名:3号液)。維持液は完全禁食状態で2Lを投与すれば最低限必要な水分・電解質を補充できるように作られています。

1日に最低限必要な成分

では1日に最低限必要な水と電解質はどのくらいでしょうか。だいたい以下の通りです。

1日に最低限必要な成分

となると、維持液1L当たりの組成は下のようになっているはずですね。

1L当たりの最低限必要な成分

はい、漸く110B5の答えですが、上記の成分に当てはまるのは選択肢Dですね。 維持液は絶食が必要な患者さんに用いますから、病棟でよく使いますね。

Na 1g=17mEq

どうですか、少しは輸液が身近になったでしょうか。最後となりますが、gとmEqの換算は絶対に覚えましょう。Na 1g=17mEqです。

例えば3g/日の塩分制限がされている患者さんに生食1000ml点滴するとどうなりますか。生食1000mlには154mEqのNaが入っているので、約9gの食塩を投与していることになります、つまりこの患者さんにとっての3日分です!

gとmEqの換算を覚えておけば、目の前の患者さんにNaをどれだけ負荷できるかが見えてきます。

そういえば、Na 1g=17mEqの換算は111回の国試に登場したと聞きましたよ。

病棟実習の時に患者さんの輸液内容をみて、「食塩に換算すると何gですね」と言えたら、格好良くないですか。

今日はこの辺で、またお会いしましょう。

参考文献

輸液を学ぶ人のために

p1-23



初版は1981年ですが未だに朽ちることはありません。著者と看護師との対話を通して、輸液の基礎が誰でもわかりやすいように記述されています。

Dr. 須藤の酸塩基平衡と水・電解質

p1-27



文系出身である僕が、初めて浸透圧と張度の違いを理解できた一冊。図が多く掲載されており、視覚的にも理解しやすくなっています。

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